(株)Jコミックテラスの中の人

マンガ図書館Zに関する実験や報告をするブログです。

新しくなった「マンガ図書館Z」の5つの秘密 〜悪魔を滅ぼす禁断の力〜

こんにちは、(株)Jコミックテラス取締役でマンガ家の赤松健です。
私が2011年から運営してきた絶版マンガ図書館Jコミ)」ですが・・・・おかげさまで近年、マンガ家さんからの掲載依頼が殺到し、マガジンで連載しながらの運営ではさすがに厳しい状況になってまいりました。(^^;)
そこで先月から、大手企業の資本を入れて新会社を作り、スタッフを増やして、「掲載スピード」「作家サービス」の大幅向上を図っております!


新会社の名前は「(株)Jコミックテラス」と言います。略して「Jコミ」です。(笑)


そして、8月3日からスタートした新サイト名は「マンガ図書館Z」です!*1


・・・いわゆる「会社売却」ではないので、赤松は別に儲かっておりません。(笑)
もちろん赤松が続けて前面に立って運営を指導し、作家さんとの対応も担当いたします。つまり、

  • 「掲載スピードが上がって、作家さんが儲かるサービスが大幅に増える」こと以外は、今まで通り

ということです。


主なサービスの特徴としては、

【1】広告収益は、今まで通り作家の取り分100%
【2】オフィシャル全作品で、「電子透かし入りPDF」も同時に販売
【3】いよいよ51カ国語の自動翻訳が(オフィシャル全作品で)スタート
【4】コミックスになっていない部分を、オンデマンド印刷して販売
【5】電子書籍YouTubeとしての機能を持つ、新型アップロードシステム

となっています。
どれも様々な理由から、他社では非常にマネしにくいものです。
特に【5】が重要なのですが、まずは1〜5を順番に詳しく説明していきましょう。



【1】広告収益は、今まで通り作家の取り分100%
マンガ図書館Zでも、やはり基本は「広告収益型の無料閲覧」システムです。
読者は無料でマンガを全巻読むことができ、広告収益は今まで通り作家の取り分が100%となっています。
例えば電子の売上げが年1万円を切っている作品は、ぶっちゃけ有料販売するよりウチで無料公開(広告収益型)した方が儲かるのですが、それよりも何よりも、無料公開すると感想がいっぱい来るのです。作家的にはそれが嬉しい。(^^)

新型ビュワーは、マウスのホイール回転でパラパラと素早くページをめくることが出来ます。矢印キーやスペースキー、マウスクリックでもめくることができます。広告1と2はマンガの左右にありまして、広告3はYouTubeのように「×」を押せば消えます
ただ、成人向け作品は今回、有料プレミアム会員のみのサービスとなっています*2。昔のJコミ時代と同じレベルに戻ったわけですが、これについては別項で説明いたします。

【2】オフィシャル全作品で、「電子透かし入りPDF」も同時に販売
JコミFANディングで好評だった「電子透かし入りPDF」を、Zオフィシャル全作品*3で利用できるようになりました。
ところで他の一般的な電子書籍ストアの場合、買うのは「読む権利」だけであり、倒産やサービス終了すると、買ったのに読めなくなってしまう場合がありますよね。せっかく買ったのに消滅するとは、由々しき事態です。これなら紙の方がマシ。
その点、「マンガ図書館Z」のマンガPDFは、DRM*4無しですので、どんな端末にも自由にコピーして読むことが出来ます。しかも、例えJコミが倒産しても、全く問題無く一生所有し続けることができますので、他の全ての電子書籍サイトに比べて「所有感」が段違いです。
さらに、購入者を特定することができる情報が刻印されていますので、WinnyなどP2Pに流すことは憚(はばか)られます。*5
・・・まさに「究極の電子書籍の形」と申せましょう。

  • このPDFの価格は、何と300円。(他の一般的な電子書籍ストアよりもかなり安い)
  • そして作者印税は、何と40%です!!(他の一般的な電子書籍ストアの2〜3倍!)

好きなベテラン作家さんにお布施するイメージで購入するのも良いでしょう。「電子透かしってどんな感じなのかな?」と気になる人は、プレミアム会員になると月に1冊だけ好きな本を無料で入手できますよ。



【3】いよいよ51カ国語の自動翻訳が(オフィシャル全作品で)スタート
マンガのフキダシを、コンピュータがOCR光学文字認識)して、全作品を世界51カ国語に翻訳できます。
これは恐らく世界初の試みです! これで我々日本のマンガを、世界のどこでも誰にでも読んでもらうことができるわけですね。我々作家にとって、こういうのは一つの大きな夢でした!(^^)

どうです。上部の水色のツールバーにある「翻訳」ボタンを押した後は、ページをめくるごとに、パラパラッと外国語に翻訳されていくのが面白いでしょう?! コンピュータ翻訳なので訳文はイマイチなのですが、少しくらい訳が違っていても、マンガですから「キャラクターの表情」で補完することができるのです。みなさんも、お好きな漫画でちょっと試してみて下さい。
将来的には、セリフと関連した商品を買ってもらい、作者に還元するなどが可能です。また、漫画の「セリフ検索」も可能になりますし、「日本漫画で使われている言葉の傾向」など学術的な用途にも使えそうですね。*6


【4】コミックスになっていない部分を、オンデマンド印刷して販売
最近マンガ業界で増えている、ある現象をご存じでしょうか。
それは、「単行本の1巻目は出たけど、2巻目が(描いたのに)出ない」または「そもそも1巻さえ出ない」という現象です。
最も多いのは、WEB連載が単行本化される場合かと思います。*7
この現象から作品を救済すべく、弊社では以前から「未単行本化作品の、プリントオンデマンド販売」を実施してきました。これは、

  • 当サイトに掲載された作品を、ボタン一つで「紙の書籍」として印刷し、読者の手元にお届けする

という、画期的なサービスです。
今回これがパワーアップし、Amazonのプリントオンデマンド部門と提携することによって、送料無料で全国の購入者にお届けできるようになりました。しかも何と、Amazonに「普通の紙の本」として並びます。現在は最終調整中で、10月からサービス再開予定です。
今年中には、未単行本化作品のみならず、マンガ図書館Zの「Zオフィシャル全作品」で印刷が可能になる予定です。ちょっと画像が荒めの作品もありますが・・・



【5】電子書籍YouTubeとしての機能を持つ、新型アップロードシステム
いよいよ、海賊版対策の「究極の(禁断の?)一手」が登場です!
これは、誰でも作品のデータがあればそれをアップロードして、すぐに全ページ公開できるという、まさに電子書籍版のYouTubeともいえる機能。
もちろん、広告収益は100%受け取ることができます。無料で読んでもらえばもらうほど、広告収益も増えるというわけですね。

このシステムを使ってアップロードするには、誰でも簡単なユーザー登録だけでOK。そして広告収益を受け取るには、受け取り用の銀行口座を登録するだけです。*8
生原稿スキャンや自炊ファイル、はたまた海賊版ZIPをそのまま持ってくるなど、作品データには色々あります。それら手元の作品データが、作者の収入を生み出す「打ち出の小槌」になる・・・こんな画期的なシステムは、他には無いと言えるでしょう!


そもそもこういった「広告収益100%分配」というのは、普通の企業にはできませんし、続けるのも難しいです。
・・・では、なぜやるのか? それを理解してもらうには、海賊版について理解してもらうことが必要です。


さて、皆さんご存じの通り、ネット上は海賊版のZIPファイルであふれています。試しに私の『ラブひな』を探してみると・・

はい、ラブひなの海賊版ZIPがいっぱい出てきましたね
また、例えばよく知られるこのサイト「はるか夢の址」をご覧下さい。ここからのリンクで、マンガ単行本どころか今週のジャンプやマガジンまでも違法ZIPに辿り着けてしまいます。作家の皆さんも、ご自分の名前で検索してみて下さい
YouTubeやニコ動も「違法なアップロードの排除」には取り組んでいるのだと思うのですが、残念ながら、私の作品(例えば「ラブひな」)のアニメ版やCDが、今もYouTubeにも大量にニコ動にもバンバン掲載されまくっているのが現実です。
そして、これらアップロードされたものを見たり読んだりしてもらっても、作家には1円だって入らないんです。


こういった海賊版ZIPですが、過去に何度も出版社が撃滅作戦を展開してきました。しかし、海賊版と正規版はいつでもイタチごっこの関係にあり、海賊版を撃滅できたことは過去に一度もありません。
「絶版本」に至っては、出版社に「絶版本の海賊版」をどうこうする権利がありませんので、完全に野放し状態です。そう、絶版本は世界の誰も守っていないんです。全然知らなかったでしょう?(^^;)>作家の皆さん


私が思うに、(特に絶版本の)海賊版を撃滅するには、

  • 海賊版と同じく無料であること。
  • ウイルス感染の恐れもある海賊版より、セキュリティ的に安全であること。
  • 海賊版より使いやすく、さらに自動翻訳などの付加価値がついていること。
  • うしろめたい罪悪感と共に読むのではなく、むしろ「(広告収益などの面で)私は作者の役に立っているんだ」など、読んでいて気持ちの良いシステムになっていること。

が重要です。この4点がすなわち「マンガ図書館Z」の根幹にもなっています。
そして、何より「マンガ図書館Zにくれば、どんな作品でも読める」状態を目指すことが肝要。「新型アップロード機能」はそのための仕組みであり、作品をどんどん集める仕組みでもあるのです。


もちろん、既存の出版社や電子書籍ストアの迷惑にならないように、特別な対策もとられています。弊社のアップロード機能では 、hon.jpと正式提携して「出版社が今扱っているような作品」は自動的に削除されるようになっています。これを「絶版判定アルゴリズムと名付けました。だから、例えば『ワンピース』は(例え尾田先生ご本人がアップロードしたとしても(笑))このフィルタに引っかかって削除されます。
他に、明らかにおかしなものは手作業で非公開の対応をいたします。このアップロード機能は、YouTube等と同じく、誰でも「自分の作品」をアップロードしてもらう手段として提供されているからです。

  • 「作者と読者が、共にハッピーになるWin-Win」を目指した、他にはない画期的なシステム。これがマンガ図書館Zの新型アップロード機能です!


・・・いかがですか、この壮大な構想!!(笑)
もう、手持ちのデータをアップロードしないという選択肢はないはずですね。まあ、海賊版の業者さんはご不満かもしれませんけど。(^^;)
なお、作品をアップしたいが「データを持っていない」とか「手に入らない」、「海賊版で流通しているようだが、もっと良い画質のデータで公開したい」ような場合は、我々にお知らせを。専門スタッフが無料でデータを準備したり、既存データをブラッシュアップいたします。同時に、電子透かし入りPDF販売やキンドル販売などで、マネタイズも進めていきます。


このシステムが定着すれば、理論上は出版社が管理している以外の「日本の全ての書籍の本文画像データを全ページ収録」し、その収益を作者側に渡すことが出来る・・・という流れが構築できるでしょう。
そしてやがては、国会図書館が死蔵している「日本のほぼ全出版物の画像データ」を、作家に利益が行く形で利活用すると共に、オーファンワークス*9の問題にもケリを付けるという、作家と読者の夢を実現させることができるのではないかと私は考えています。
その時こそ、

  • あらゆる作家がうるおい、読者の『読みたい!』も満たされ、そしてネット上の海賊版は全滅するという「マンガ図書館Z」の究極目標を達成することができる

のです!!



・・・さて、マンガ図書館Zの5つのサービスをご理解いただけましたでしょうか。(笑)
特に【5】の新型アップロードシステムが肝ですので、その使い方を私が詳しく解説していきたいと思います。まずは、

  • 拙作「A・Iが止まらない!(新装版)」を私がネット海賊版サイトからダウンロードしてきて、マンガ図書館Zの新型アップローダーを使ってアップロード、そして全ページ公開するところから、訓練を始めてみましょう。

9月25日(金)の22時から、ツイッターで実況していきます。(アップロードしたら、うちの絶版判定アルゴリズムに引っかかったりして・・・)
私の計画に賛同する方、ちょっと興味がある作家さんは、ぜひツイッターでの実況をご覧下さいませ。



(追記) 実況、無事に終了しました! その様子はコチラです。



*1:作家さん達から不評だった「絶版」という単語を削りました。(><)

*2:試し読みなら無料で12ページできます。

*3:Zオフィシャル作家というのは、従来までのJコミ時代と同様、弊社と正式契約したプロ商業作家さんのことです。一般投稿作品とは違って、電子透かし入りPDFやKDP、51カ国語の自動翻訳などのサービスを自動的に受けることが出来ます。

*4:デジタル著作権管理

*5:「電子透かし」は著作権法(第113条第3項)によって、不正に除去・改変すると著作権侵害と見なすことができ、損害賠償だけでなく逮捕&刑事罰まであります。これが「暗号化PDF」や「暗号化ZIP」と大きく違うところ。

*6:私(赤松)の持論ですが、文字列検索ができないと、「電子化」する意味は薄いです。 文字列検索ができれば、動画投稿サイトにはない、電子書籍ならではのメリットが生まれます。なぜならテキストは「広告」と精度良く結びつくからです。つまり、セリフ文字列を正確に「広告に結びつける」のが、私(赤松)の個人的な目標であります。読書中に、「そのセリフに関連した商品が買える」、「セリフの言葉から類推し、特定の商品をお薦めする」、「特定の語句の検索結果として、弊社の電子書籍が出るようにする」など。

*7:WEB連載というのは、その殆どが「ネット上で連載マンガを無料で読んでもらい、紙の単行本の売り上げで収益化する」ビジネスモデルとなっています。そうなると、どうしても「WEB上で連載スタート。」→「紙の1巻の売り上げがイマイチだった。」→「残念ながら打ち切りが内定する。」→「採算が取れなそうなので、2巻は出さないことにする。」→「急に連載も終わる。」というパターンが増えてしまうのですね。

*8:アップロードだけを行い、銀行口座を登録しなければ、広告収益を受け取らないこともできます。その場合は、正当な権利者が申し出るまで広告収益がプールされていきます。また、10月中には「メールアドレスと口座名義」だけでOKになる予定ですので、詳細は10月中旬頃にマンガ図書館Zをチェックして下さい。

*9:権利者が見つからず、事実上利用できなくなっている作品のこと。こうなると、もう海賊版の出番というしかない悔しい状態です。孤児著作物とも呼ばれています。