2018年4月18日、NHK「クローズアップ現代+」に出演してきました。
テーマは当時話題の「漫画村」(海賊版サイト)で、直後のツイートがこれです。
上記の
「出版社と作者が共同で漫画村(のような仕組み)を作り、ただし収益は作者と出版社に正しく分配する」システムについて、これから解説いたします。
これこそは「究極の
電子書籍サイト」に近いと感じます。
【 漫画村事件で分かった3つのポイント 】
現在漫画村はアクセス不能になっていますが、「漫画村が潰れてホントに良かった!」だけで終わらず、もう一歩先に進むべきでしょう。
・・・こういう都市伝説をご存じでしょうか。
- 「最近の幼稚園児や小学生は、マンガの読み方が全くわからない子がドンドン増えている」
というものです。どのコマから読み始めてどっちに読み進めていくのかが分からないので、マンガなんかいずれ滅びるよ、というのです。
しかし驚いたことに、漫画村があのインスタグラムのアクセス数に匹敵するくらい膨大に読まれました。小学生も社会人も、みんな驚くほど読むわ読むわ。
使いやすく、しかも全出版社横断で、更に無料のサイトなら、みんなまだまだマンガを読むんだということが分かったのです。
そこまで大量に読んでもらえるんだったら、ぜんぶ根こそぎ作者連合と出版社連合が受け継いでしまう手さえあった。まるまる漫画村の読者層をもらえば、すぐに世界最大の漫画サイトになります。さらに、海賊版サイトを支える概念「第三者による投稿」システムを稼働させ、サイトを常時更新&持続可能な状態にできないか、と私は考えました。
- 都市伝説「最近、漫画の読み方が分からない小学生が増えている」は、杞憂だった。
- 漫画は「他の娯楽と比べても」まだまだかなりの需要があることが分かった。
- 漫画村のユーザーは殆ど(96%)国内だった。
(=翻訳されていないと海外では読まれない)
読者層や利用者数など「確かな需要」が見えたので、
それを適切にマネタイズ(収益事業化)できないか。
↓
漫画村など海賊版サイトを支える概念「第三者による投稿」を、
出版社の協力を得て合法化してはどうか
【 「現行作品」と「絶版作品」に分けて考える 】
まず、漫画を「現行作品」と「絶版作品」に分けます。これは、既存の出版社に迷惑をかけないためです。
★「現行作品」の定義
今も出版社が取り扱っており、重版や電子化、メディアミックスなどの管理をしている作品のこと。
出版社が独占的な出版権や電子化権を持っているので、海賊版サイトに対して削除要請など独自に行うことができる。
★「絶版作品」の定義
作者と出版社で締結される「出版契約」が切れた作品のこと。
海賊版サイトに掲載されていても、出版社は特に守ってはくれない。作者自身が削除要請や訴訟などを行う必要がある。
上の「現行作品」については、本当は「全出版社横断の定額読み放題サービス」が最高なのですが、今はまだまだ実現できそうにありません。そこで、擬似的な手法で再現します。→ 別記事:【現行作品は「公式リンクサイト」化で対応】
【絶版作品は「第三者による投稿システム」で利益分配】
さて、ここからが本題です。絶版作品について、いよいよ「実証実験その1」を行ってみましょう。
まずは今回のパートナー、実業之日本社さまの登場です。
老舗の出版社「実業之日本社」の希望
- 現在までに自社で発行した書籍の「全て」を電子化したい。(マンガ以外も)
- ここ10年程の書籍なら大体電子化できているが、それより古い本は売れにくいし、今後も自社で電子化する予定は無い。
- そもそも絶版の書籍が多く、そうなると電子化する権利が(今のところ)無い。
- そこをゼロ投資で電子化し、しかも広告収益を得られるとなお良い。
まずは「電子化してみたい作品のリスト」を作成します。
今回は、ざっくり2000年以前の約9000作品を対象としました。かなりの数ですね。マンガだけではなく文芸作品が殆どです。すなわち、今回の実証実験では「文芸作品」も対象となっています。
★「実証実験の対象作品リスト(実験スタート時)」をダウンロードする(1.7MB)
そして、次の図の流れで電子化の実証実験を行ってみましょう。
- まず、市民(作者でも出版社でもない第三者)が、上記リストから「自分の好きな絶版作品(みんなに読んでほしい漫画や小説)」を(布教も兼ねて)マンガ図書館Zの実証実験コーナーにアップロードします。これは海賊版サイトから落としたZIPファイルでも別にOKです。
- アップロードが成功すると、実業之日本社が自社の名簿を使って「作者に、電子化の意志を直接確認」します。
- 作者が「電子化OK」なら無料公開されます。「電子化NG」なら公開されません。
- 広告収益は1年の間、「作者:出版社:アップローダー」=「80%:10%:10%」の比率で分配されます。*1
このシステムはすなわち、
漫画や小説が書けない人であっても、作者や出版社に貢献しつつ、好きな本を無料公開できて、さらに自分も稼ぐことができる
ということを意味します。
さらに、
- 海賊版サイトと違って、作者に無断で公開されることはない。
- YouTubeなどの投稿サイトと違って、作者名簿を持つ出版社が能動的に作者を探し、直接意向を聞くのでクリーンである。
- マンガ図書館Zの今までの投稿システムと違って、権利者以外でも広告収益の10%を得られる。
という特徴を持っています。
【出版社・投稿者・作者(権利者)のメリット】
★ 出版社のメリット
- 出版社は(電子化の予定が無い)過去の出版物を、ゼロ投資で電子化していくことができる。
- その際、もはや権利の無い絶版書からでも広告収益の10〜20%を得られる。
- 電子化された作品群の閲覧数や具体的な収益額などのデータを、いつでも閲覧できる。
- 自社でさえ保管していないような「古く貴重な書籍のデータ」が上がってきた場合、請求すればZIPファイルを無料でもらえる。
★ 投稿者のメリット
- 漫画や小説が書けなくても、既存の書籍を投稿するだけで広告収益の10%を得ることができる。(ただし一年間)
- 出版社が「電子化されていない過去の出版物」のリストを公開してくれるので、それに沿った投稿をすれば安全である。
- 無料の電子書籍プラットフォーム(マンガ図書館Z)を通して、自分の好きな作品をみんなに布教できる。
- 作者から「サイン入り感謝状」が届く場合がある。(一応頼んでみます)
★ 作者(権利者)のメリット
- 過去の作品や、単行本化されなかった読み切り作など、従来なら電子化が難しかった作品まで電子化できる可能性がある。
- 「公開OK」の回答だけ出せば、あとは特に何もしなくてよい。(=実作業が無い)
- マンガ図書館ZとZオフィシャル契約をすれば、電子透かし入りPDFが販売でき、51カ国語のフキダシ自動翻訳にも対応できる。
興味を持たれた方、「マンガ図書館Z」のTOPページへどうぞ。
または、実証実験専用のアップロード解説ページへ。
ちなみに現在までにアップロードされている作品は、TOPページの一番下に表示されています。*2
【Q&A】
Q:この「実証実験その1」が成功したら、他の出版社にも広げていく予定はあるのですか?
A:あります。具体的な数字が出てきたら、その結果を知りたい出版社は多いと思いますので、直接お誘いに行きたい考えです。
Q:同じ作品の別スキャン版が、いくつもアップロードされてきた場合はどうしますか?
A:現在は、同一タイトルの複数投稿が掲載可能になっています。作者の許諾が出て本文が公開される段階で、画質の良し悪しを考慮して1つに集約されます。そして最も採用率の高い版をアップロードした人が、広告収益10%を取る形を予定しています。
Q:一回アップロードすれば、広告収益の10%が一生もらえるのですか?
A:もらえる権利は一年間だけです。すなわち実証実験が終われば終了で、もし実験が続く場合も2年目からは「作者:出版社」=「80%:20%」に設定されます。
Q:10%の根拠は?
A:明確な根拠はありません。一応、商業漫画の作者印税率が10%であることから連想した数字ですが、そもそもその「作者印税率10%」にさえ明確な根拠は無く、出版界の慣習でしかないのです。今回の10%が適正かどうかは、実証実験を重ねて確かめていきます。
Q:リスト以外の作品が投稿されてきたらどうしますか?
A:一応作者に確認を取り、もし公開OKならば、リスト以外の作品であっても公開してしまいます。作者と連絡が取れなかった場合はもちろん非公開になりますが、表紙だけは掲載されるので、権利者がそれを見つけて連絡してきてくれることを期待しましょう。
Q:投稿者は匿名でもOKですか?
A:はい、匿名で投稿できます。広告収益の振込用に「銀行口座の登録」は行いますが、その情報は非公開であり、弊社サーバにさえ保管されません。
さて、次回は一ヶ月後の状況をレポートしてみたいと思います。
果たして投稿はあるのか?! 許諾は出ているのか?! 乞うご期待。