(株)Jコミックテラスの中の人

マンガ図書館Zに関する実験や報告をするブログです。

「電子書籍版YouTube構想」が、プロ漫画家280名の賛同署名を得て正式スタート

こんにちは、漫画家の赤松健です。
別冊マガジンで連載中の『UQ HOLDER!』が今年10月にアニメ化されるので、よろしくお願いいたします!(※宣伝!)


・・・ところでご存じでしょうか。文化庁がいよいよ著作権法を改正し、「著作者の力を弱めて、ややネット利用者側の利便性に振る」方向性でまとまったようです。


これは「権利制限」と言いまして、もし我々著作者に無断で作品が利用されたとしても、「著作者が文句を言う権利を、一部制限する」というものです。ぶっちゃけGoogleなどに有利な法改正ですね。
この後、「フェアユース制度*1」が導入されると完成形でして・・・そうなるといよいよGoogleAmazonNaverが「電子書籍版のYouTube的な投稿サイト」を構築し、何でもかんでも日本の書籍を無断収録しては「これはフェアユースだ」と主張する事態が想像できます。
既にアメリカの「Internet Archive」などは、世界中のあらゆる書籍データ・動画データ・録音データなどの「寄付(←誰から?)」を受け付け、それらを「歴史的なコレクション」と称して、無償で公開しているのですけどね。*2


私は色々な場所で言っているのですが、

  • 外資系企業に、日本コンテンツを取捨選択&検閲削除するパワーを与えるのは、非常に危険である

と思っています。
既に、検索エンジンや動画はGoogleに、スマホや音楽はAppleに、電子書籍クラウドAmazonに、それぞれプラットフォームを支配されてしまいました。
我々日本人は、それらを利用させていただく立場です。そこにあるものは基本、何をどう削除されようと文句を言う権利はありません。

日本の作家として、これは非常に悔しく情けないことです。


では今、我々がどうすれば良いかと申しますと、電子書籍外資系企業に支配される前に、「著作者たちが率先してプラットフォーム作りに参加する」ことだと思います。できれば、著作者側が主催者になれば非常に強いです。


そこで私は、いわば「電子書籍版のYouTube」とも言えるプラットフォームを2年前から構築し、色々実験を続けてきました。http://d.hatena.ne.jp/KenAkamatsu/20160113/p1


マンガ図書館Zの「電子書籍YouTube」システムは、

  • 権利者本人から、マンガ投稿を受け付ける。
  • 銀行口座が登録されていれば、広告利益を100%お渡しする。
  • ただし出版社が電子化していない作品に限る。
  • そのマンガ投稿が実は権利者からではなかった場合、ホンモノの権利者が「すぐ削除」「しばらく様子見」「広告収益を自分に付け替え」の3つから行動を選べる。

というものです。最後の選択肢はYouTubeと同様の機能ですね。
違っているのは、

  • 広告利益が全て作者に渡される点
  • 海外の価値観による、勝手な検閲や削除が行われないこと
  • 逆に、出版社が扱っている現行連載作品は(例え作者からの投稿であっても)削除される点

です。


この試みについて、複数の大手出版社が支援を表明して下さいましたが、何よりプロ漫画家たちから「この試みを支持する」旨の署名が多く集まっています。

★ プロ漫画家284名による賛同署名(到着順)

赤松健が進める「電子書籍YouTube構想」を、私は支持します。

とだ勝之田中ユタカ朱鷺田祐介加治佐修・毛羽毛現・宝蔵院貴志・梶本潤松浦まさふみ・吉沢蛍・桜野みねね・すぎやまゆうこ・井上元伸・宮本明彦・石山東吉西川伸司内田美奈子井上純一・ひなたみわ・愛田真夕美・春日旬足立淳竜巻竜次海明寺裕・田中正露・山本貴嗣ちばぢろう・くおんみどり・ねぐら☆なお松田尚正カミムラ晋作水野英子島田ひろかず八神健佐藤マコトあろひろし・小林じんこ・松本英孝・竹内未来・亜月亮・萩原京子・河本ひろしあずまよしお永野のりこ長谷川裕一・小林ゆき・陣内みるく・篠原正美・いぶきめぐる・やすこーん・和田繭子・あさいもとゆきかのえゆうしこいでたく新谷明弘笹本祐一樹崎聖西田東・すぎたとおる・江藤ユーロ・岩村俊哉相原コージ・丹羽広次・広石匡司・杉本亜未・松尾元敬・深田拓士スパークうたまろ・まるいミカ・ナガテユカ・橘美羽・服部かずみ・神吉李花・かまぼこRED・丘辺あさぎ・陽気婢飯田耕一郎正木秀尚・しまたか・榎本由美・上西園茂宣・よつば◎ますみ。・松原千波・西川ジュン・椎名見早子・船戸ひとしみずきひとし・えなまなえ・冬凪れく・霧賀ユキ・友吉・よしむらなつき悠理愛・井出智香恵・中貫えり秋津透・☆よしみるあおきてつお・まんだ林檎・海野螢猪熊しのぶ・田中としひさ・古事記王子中垣慶・南澤久佳・若木未生河内実加・浅田有皆・魔訶不思議・西川魯介・高藤ジュニア・たむら純子嶺本八美計奈恵ここまひ川崎ぶら栗原一実・なかにしえいじ・ほりのぶゆき有間しのぶ御童カズヒコ雑君保プ・ひな姫・竹下けんじろう梅川和実・まつもと千春・藤咲真石田和明・高波伸・洋介犬・松田未来・Macop・七月鏡一・芹沢ゆーじ・しまたけひと・遠野かず実・藤緒マリカ・かとうひろし古谷三敏瀬上あきらたかしげ宙中村地里・Dr.モロー・花津ハナヨ桂木すずし・竹山祐右・記伊孝ふじのはるか新居さとし後藤寿庵井上正治ふくやまけいこ田中雅人・摩耶夕湖(マヤよーこ)・浦川佳弥・中山乃梨子・どざむら・夏目義徳・横山了一・カジワラタケシせがわ真子梶研吾・坂木原レム・眠田直・ひざきりゅうた・あまねりつか・むらかわみちお高田慎一郎・幸田廣信・咲香里葛原兄悠宇樹・社佑哉(松森ナヲヤ)・清水ともみ・東谷文仁出口竜正堤抄子・神田はるか・雁川せゆ・御米椎飯閃澪)・きゃらめる堂遠山光おおつぼマキ竹谷州史大野安之喜国雅彦国樹由香岡崎つぐお若尾はるか猪原賽牧野靖弘松山せいじ吉野志穂ほしのふうた松原あきら(松羅弁当)・あきら肇芳崎せいむゆきやなぎ石井有紀子・鏡佳人(深紫’72)・東城和実島崎譲中津賢也一ノ瀬ゆま星崎真紀上総志摩よしまさこ国樹由香・米田裕・西村姜・龍炎狼牙海野やよい・四条トリマル・柳田直和山下てつお・嶋津蓮・高平鳴海・おぎのひとし・小野敏洋上連雀三平)・石岡ショウエイ・たくじ・榊原薫奈緒子福田素子・ものたりぬ(みなづき由宇)・くれいちろう・魔北葵・神塚ときお・山田浩一・くりひろし・椎名晴美・江川広実浦嶋嶺至井荻寿一唯登詩樹永吉たける・河内愛里・上山道郎・宗田豪・佐々江典子・樹木洋二・かわはらしん・山咲梅太郎まいなぁぼぉい東篤志・椎名りつ子・しんむらけーいちろー・東篤志・椎名かつゆき・みにおん・Dr.天拝・深谷陽・おみおみ・奥田桃子・荒木ひとし滝れーき・河方かおる・市川和彦・がぁさん・タナベキヨミ・やまのたかし・やぴ・比古地朔弥・ヨシダ・石田敦子・蒼崎直・夜野権太(やのごん)・梵天太郎事務所・近藤ようこ・浅月舞・祭丘ヒデユキ三田誠・花田朔生・門脇英治・Maruto!・ふじじゅん・定広美香・森園みるく・夏海弘子・平雅巳・SABUROH長谷円浦川まさる・神崎将臣美衣暁星里もちる阿部川キネコ
(※敬称略)

やはり皆さん、外資系企業による日本コンテンツの支配は避けたいとのことです。
また、現実問題として「(特に絶版漫画が)海賊版業者に利用&搾取されている」のは事実であり、ネットワークを通じて作品が「再評価」される仕組みを整備することが、多くの作家を助けることになるだろう、などの声が上がりました。
私は大変勇気づけられています。


こうなれば、電子書籍YouTube「著作者主導による完成」をやってみるしかないです。


ちょうど先日、慶應義塾大学経済研究所の田中辰雄准教授からも、海賊版マンガは、最新作の売上げを減らし、旧作の売上げは促進させるという論文が発表されました。「最新作の海賊版は叩くが、旧作の海賊版著作者側で海賊版データをもらってしまい、直接収益化するほか、プロモーション目的にも使えば良い」という私の結論とも合致しています。


また、例の『王ドロボウJING』『オレ通AtoZ』が投稿されてから半年ほど経っていますが、特に削除要請はありません。http://d.hatena.ne.jp/KenAkamatsu/20161111/p1
そして今、「王ドロボウJING ZIP」でググって海賊版を探してみると、海賊版データはほぼ全て削除(リンク切れ)になっている上に、一番上位に来るのはマンガ図書館Zです。マンガ図書館Zでは(銀行口座が登録されていないため)広告収益がプールされており、出版社にも熊倉先生から連絡が来たらすぐ知らせてもらう旨を頼んであります。


・・・もしこの状況を批判するとして、それは「誰が」「何のために」批判するのでしょう? また、280名のプロ作家の意向はいかがでしょうか?
ネットで発言しにくい方は、私の個人メールへどうぞ。 akamatsu@biglobe.jp


いよいよこの4月から、マンガ図書館Zでは「電子書籍YouTube構想」を正式スタートさせています。既に、いくつか作者からの投稿もあるようです。


今後とも、私の挑戦を見守っていただければ幸いです。
よろしくお願いいたします。



【続報】
何と熊倉先生と恋緒先生に連絡が付き、本人確認もできたため、出版社から公式に電子化されることになりました。そこで予告通り、マンガ図書館Zからは削除させていただきます。めでたしめでたし。(^^)

*1:公正な利用なら無断使用でも著作権侵害にならない

*2:例えば古いマイコン雑誌『I/O』も無断公開されており、私も愛読しています。I/O関係者の考えはコチラ