(株)Jコミックテラスの中の人

マンガ図書館Zに関する実験や報告をするブログです。

★ エロパロ&BL同人誌の合法化計画! 〜古今東西の「二次創作同人誌」を合法化して保存し、正しく後世に残そう!〜

ホワイトリストの一種である「自分のコレを上げてくれ」システムを使って、いよいよ
 過去の「エロパロ&BL同人誌」の合法化実験
に着手してみましょう!*1


・・・ところで皆さん、ご存じでしょうか。
コミケなどで頒布されている同人誌は、その多くが「アニメや漫画やゲーム」をエロ化したりBL(ボーイズ・ラブ)化したりした、いわゆる二次創作同人誌と言われるものです。
これらは著作者の許可を得ておりませんので、著作権的にはグレーな存在だったりします。

【過去の事件1】
1999年1月、『ポケモン』をエロ化して描いた同人誌で、女性の同人作家が逮捕される事件が起きました。
http://bit.ly/pxqZZV  http://bit.ly/pmN1dm
この件は警察と任天堂がちょっとやり過ぎだった感があるのですが*2、しかし法的には、任天堂の取った行動には問題はありません。

つまり、「エロパロ同人作家は、ネタ元の著作者が文句をつけてきたら、退却する以外にない」わけなのです。
コミケ準備会やpixivも、著作権に関しては黙認に頼っています。まあ、著作者がいきなり訴えてくることは近年考えにくいですが、結構不安ですよね。逮捕まであるなんて・・・


また、そういう弱い立場ですので、エロパロ&BL同人誌は、ネットなどで勝手に展示されても、何となく文句が言いにくい状況にあります。
←例えば、こういった「エロパロ同人誌の無断掲載サイト」
ネット上に多数存在しており、他人が書いた同人誌をネットやwinny等からいっぱい集めてきて勝手に掲載し、アフィリエイト等で儲けるのが主な目的となっています。
これに対して、同人作家さんが「おい!俺が描いた同人誌を無断で載せるなよ!」と抗議したとしましょう。
すると、「お前が言うなww」と返されてしまう可能性があるのです。
だから、ネット上では誰かの同人誌がいつも堂々と転載され、エロパロ系の同人作家さんはみんな泣き寝入り状態。(><)
これで良いのか?! 良くない!!



・・・ところが、実は良い手があります。(^^)
例えばラブひな』のエロ同人誌の場合ですと、ラブひな』の作者(赤松健)がOKを出しさえすれば、あっという間に完全合法な存在に変化してしまうのです!
著作権親告罪*3であり、権利者が訴えない限り、絶対に罪にはなりません。

【過去の事件2】
今年1月、ネギま等の単行本をShareに流した男性会社員が逮捕された事件がありました。何と驚いたことに、事前に警察が「逮捕してもいいですか?」と著作者の私に訊いてきたのです。これが親告罪の凄いところ。(まあ、そこで私が「ダメです」と言ったところで、他の作品を理由に結局は逮捕しちゃうわけですが。)

逆に言うと、作者さえOKすれば、エロパロ同人誌はグレーな存在でも何でもなく、100%合法的な著作物となるわけです! 違法コピーに文句が言えます。海外で売るのだって自由です。


そこで、「作者が同人OK」という事例を集めて、同人誌の「完全合法化」の実験をしてみませんか?


日本の漫画史において、もはやコミケなどの同人誌は、無視できない存在です。特に80年代以降の日本漫画界の発展は、同人誌の存在無くしては語ることはできません。
例えば高橋陽一先生や車田正美先生に許可を取って、古い「キャプテン翼」や「聖闘士星矢」のBL同人誌をアーカイブしていけたら、漫画史の重大な資料になると思うんですよね。(かなり難しいとは思いますが・・・)
古い同人誌が、このまま歴史の闇に埋もれて「無かったこと」にされるのは、あまりにも惜しい。せめて「原作者と同人作家さんの両方が同意した物だけでも救い出したい」という希望があります。二次創作には面白い本がかなり多いですし、漫画史上の資料的価値も高い。歴史から消え去りそうな二次創作物はエロパロだけではないので、もちろん一般パロも正しく保存できればと思っています。


そこでまずは「同人OKのガイドラインを作り、「同人誌OKだよ」という漫画家さんと、「古い同人誌を掲載してもOKです」という同人作家さんをマッチングしようというわけです。
もちろん、これにも広告を付けて、収益は原作の漫画家さんと同人作家さんの折半とします。*4
ハードなエロパロやBLを無修正で収録したいのと、広告の種類が限定されるジャンルのため、読者の年齢チェックができるJコミ・プレミアムを使います。サーバ代は全てプレミアム料金から捻出しますので、広告収益はそのまま作家&同人作家にお渡しできます


あと、保存作業に入るなら、例えば5年以上昔古い同人誌に限定すべきですよね。古いものを保存するために、新しいものに悪影響が出るのはつまらないし。(つまり、同人誌の新刊まで原作者との折半になったらマズいということ。)
また、エロパロ同人誌を見て怒る漫画家先生もいらっしゃいますので、その辺は分けて考えていきます。



【 まずは「ラブひな」で実験してみよう! 】
テストとして、私の著作物であるラブひなのエロパロ同人誌を集める実験をしてみましょう。
・・・しかし、ちょっと問題があります。エロパロ&BL同人誌がJコミに集まったとしましょう。その場合、いくら原作者側がOKでも、同人作家さんの方が見つからないとか、OKが得られない可能性がありますよね。
あり得るパターンは、以下の4つ。

(1)原作者がOK。同人作家もOK。
どちらの執筆者もOKだった場合。これは何の問題もありませんね。

(2)原作者がOK。しかし同人作家はNGを表明。
この場合は、道義的に「同人誌は掲載しない」のが妥当でしょう。原作者と同人作家が争うような事態は避けるべき。ただしタイトルとサークル名程度のデータは記録したい。

(3)原作者がOK。同人作家は消息不明。本はタイトル&サークル名のみ記録する。
同人作家の方が見つからなかった場合です。仕方ないので、エロパロ同人誌のタイトルのみ公開して、カタログ的な位置づけとします。読者は本文を読むことはできません。

(3’)原作者がOK。同人作家は消息不明。でも本は公表しちゃう。
原作者のOKを取り、同人作家の許可は得られないまま、同人誌の内容を公表してしまうパターン。広告収益の半分は同人作家用にプールしておき、読者は本文を読むことができる。ただし後で同人作家側が現れてNGを出したら、本人確認の末に削除する。

問題は(3’)です。
ここが難しいところですが、作者の消息を充分な時間をかけて探したが見つからなかった場合、「文化庁で裁定手続きを取れば、適法にその著作物等を利用することができる」という手法を、著作権に詳しい弁護士さん達から紹介していただきました。
著作権的にグレーな存在である二次創作同人誌裁定手続きを用いた事例は恐らくありませんが、一般的な裁定手続きよりも、比較的容易に進めることが出来るでしょう。(何しろ大元の権利者である「原作者」が味方に付いていますので。)
実は、同人作家さんが死去されてご遺族も見つからない場合も、同様の処置で公開が可能となります。
同人サークルの回転は早く、去年あったサークルが今年もあるとは限らないし、そもそも奥付にも住所などが無いことが多いので、連絡の付けようが無いことも予想されます。この手法はなかなか使えそうです。


・・・が、しかし!
ちょっと問題なような気もしますよね。
何しろエロエロな内容ですし、同人作家の感情や性癖が発露した二次創作同人誌は、いわばその人の「真の姿」
そんなデリケートな作品を、合法だからと言って、無断で掲載してしまって良いのでしょうか?
でも、こうでもしないと、昔の同人誌なんかは殆ど掲載できなくなる可能性が高いし・・・う〜む。


この点について、みなさんのご意見をお聞かせいただければ幸いです。m(_ _)m
(コメント欄にお願いします)


*1:著作権的に全く問題の無い「オリジナル同人誌」と違って、二次創作の「エロパロ&BL同人誌」は法的に非常に弱い存在です。そこで当企画では、そういう二次創作同人誌を中心的に守っていきたいと思います。

*2:そもそもポケモンの生みの親である田尻智氏は、ゼビウスミニコミ誌を勝手に作って販売していた過去を忘れてしまったのだろうか?

*3:被害者からの訴えがない限り、検察官が起訴することのできない種類の犯罪。

*4:だたし、まだ絶版ではない作品では「出版社の許可」も必要となります。そして恐らく、許可は出ません。