(株)Jコミックテラスの中の人

マンガ図書館Zに関する実験や報告をするブログです。

文化庁の裁定制度で甦るか?!亡くなった柴山薫先生のマンガたち!


柴山薫(しばやま・かおる)」先生という漫画家さんをご存じでしょうか。


主に月刊少年ジャンプで活躍されていた作家さんで、代表作に『爆骨少女ギリギリぷりん』『ライバル』『チャラ!』などがあります。得意ジャンルは空手やボクシングなどの格闘技マンガ。(ちょっとエッチ多めで男子は嬉しい!)
しかし2007年の4月14日、柴山先生は急性心不全により亡くなられました。まだ42歳でした。


ここからが問題なのですが、実は作者が亡くなると、著作権はご遺族に移ります。しかし柴山薫先生は独身で、ご両親も先生が亡くなる前後に亡くなっているようで、誰にも連絡が取れません。
実はそのせいで、『爆骨少女ギリギリぷりん』『ライバル』『チャラ!』などはどこからも電子化されていないのです。


著作権に詳しい方なら、「じゃあ、パブリックドメイン*1じゃないの?」とおっしゃることでしょう。
しかし、元アシスタントさん達からの情報によると、「弟さんがいたらしい」という噂があるのです。実際いるのかいないのかは分からないので、連絡は付きません。

  • こういった、「権利者がよく分からないので、ずっと何にも使うことができない」という作品を、オーファンワークス(孤児著作物)と呼びます。


・・・さて。そういうわけで「柴山薫」先生の作品の電子化は、海賊版サイト頼みの状況になっています。orz
これは悔しいですよね。


実は昨年、私の元に、柴山先生のアシスタントの方々や親しかったプロ漫画家さんが来られまして、「柴山先生の作品を、マンガ図書館Zで正規に電子化できないか」という要請を受けました。ご存じの通り、アシスタントさんたちは背景や効果やトーン仕上げなど、作品のかなりの部分を担当しています。やはり悔しいのでしょう。また、「今後もずっとずっと海賊版でしか読まれないなんて、これじゃあ先生が浮かばれない」という切実な感情もあるようで、私は色々と手法を模索しました。




実は、こういった場合に使える制度があるのです。それは、

というもの。
「権利者が不明の場合でも、相当な努力を払っても権利者と連絡することができない場合において、文化庁長官の裁定を受けた上で、著作物等の通常の使用料額に相当する補償金を供託することにより、適法に著作物等を利用することを可能とする」という、著作権法第67条に定められている制度です。


例えば、マンガ図書館Zに電子版の『爆骨少女ギリギリぷりん』を掲載するとしましょうか。

  1. まずは専門サイトに、「権利者を探している」という広告を出します。
  2. 文化庁に申請し、権利者が儲けるであろう収益予想を示します。
  3. その予想が適正かどうかを専門家が判断します。
  4. 供託する金額を文化庁長官が決め、申請者は法務局に供託します。
  5. 文化庁長官から、使用OKが出ます。

・・・どうです、簡単そうでしょう。でも、実際にはとても複雑で難しいんです(^^;)。ぶっちゃけ使い勝手は悪いです。
とても一人では出来ませんので、私は「著作権者不明等の場合の裁定制度の利用円滑化に向けた実証事業実行委員会」という長い名前の委員会の幹事に就任し、そこで9つの権利者団体の一つ(日本漫画家協会)として参加することによって、利用実験をさせて頂くことになりました。
この委員会は文化庁がオブザーバーとなって行われる公式なもので、100万円の予算も出ています。

さあ、どうなるでしょうか。実際の取り扱いスタートは、12月中旬からの予定です。
この実験が成功すれば、漫画のオーファンワークス(孤児著作物)が堂々と利用できるようになり、ファンの皆さんも海賊版に頼らずに読むことが出来るようになるかもしれません。


特にマンガ図書館Zでは、(広告は入っていますが)全巻全ページを無料で読むことができます。
また、同時にマンガ図書館Zで販売される「電子透かし入りPDF」は、違法な海賊版と違って完全に合法的な電子書籍です。生涯手元に置くならこのバージョンでしょう。ただし裁定制度は利用期間が決まっていますので、12ヶ月後に販売は終了します。ファンはこの期間に必ず入手して下さい。一旦入手しておけば、販売終了後も一生読むことができますからね。


実験結果と今後の見通しは、このブログやツイッターで公表していきたいと思います。



私は6月頃に、こうツイートしました。

最近も、Amazonキンドル・アンリミテッド(KU)での横暴に抗議した講談社の作品が、KUから全削除されたりしましたよね。
本屋ならあり得ないですが、電子書籍なら簡単にできるんです。
実はマンガ図書館Zのアプリも、8月頃にGoogleからリジェクトをくらいまして*2、どうやら掲載している作品が 「露骨な性表現を含むコンテンツに関するポリシーに違反している」と言うのですが・・・どの作品なのか、そしてどこがどういう基準で違反しているのかを、Googleは教えてくれないですね。


やれやれ・・・この国の文化は、このまま外資系企業に管理・検閲・支配されてしまうのでしょうか。


私の理想型を申しますと、出版社が取り扱わなくなったような絶版書籍の電子版については、「著作者たちの団体が、自分達の著作物のプラットフォームを作り寡占化する」という形が望ましいですね。そして拡大集中許諾制度によって、オーファンワークス(孤児著作物)も利用できる、みたいな形。裁定制度を使ったこの実験は、その一環でもあるのです。


私の最終目標はただ一つ。

  • 国立国会図書館には、予算を使ってスキャンされた、様々な書籍の画像データが「死蔵」されています*3この中で、もう出版社が取り扱っていない絶版書籍のデータを、国民が無料で利用できるようにし、その収益を出来る限り多くの著作者に還元できるようにすること・・・が私の目標です。

求む賛同者!



【続報】
何と柴山先生のご遺族と連絡が付き、このたび集英社から公式に電子化されることになりました。このブログの活動が役に立って良かったです(^^)。「海賊版でしか読めない作品」になっては先生が浮かばれないですからね。

*1:著作権の保護期間が過ぎたか、権利が失われて公共財産となった作品のこと。

*2:現在は復活しています。

*3:これらのデータは例え館内であっても閲覧できません。もったいなさすぎる!

今こそ世に問う!この『王ドロボウJING』の収録は是か非か!?

前回のブログ更新から10ヶ月が経ちました。
赤松健、これが究極の一手。・・・なぜ我々は「電子書籍版YouTube」を目指すか


今まで古書店海賊版でしか読めなかったような作品が、安全な形で無料で読むことができ、しかも権利者の方には広告収益の100%が還元される夢のシステム。
その核となるのが、マンガ図書館Zの「新型アップロード機能」です。(マンガ図書館Zはコチラ
その後、作者本人だけがアップロードできるように改良された「新型アップロード機能」によって、マンガ図書館Zの「投稿無料作品」コーナーは運営を継続しています。


「投稿無料作品」コーナーには、プロ・アマ問わず多くのクリエイター達が、ご自身で描いた色々な作品をアップロードしています。


私も海賊版データを流用して、デビュー作を投稿しています。
『A・Iが止まらない!(新装版)』(全8巻)
海賊版サイトから自分の作品をダウンロードしてきて、それをそのままマンガ図書館Zにアップロードし、広告を付けて無料公開してしまう・・・という「乗っ取り」型の新手法です。(笑)


今、売出し中の作家さんの作品もあります。
『女装転校生ヒロ』
青空文庫のようにパブリックドメイン著作権が切れた作品)になった作品もあり。
『黄金バット(永松健夫・明々社版)』


過去に単行本されなかった作品などは、特に貴重ですよね。
『機械婦のいた街』月刊アフタヌーン94年12月号掲載短編)
マンガ図書館Z」のオフィシャル作家さんでも、実は投稿が可能です。(R18)
『花酔い』


2016年初頭には、見本アップロードされた作品データに対して「権利者以外が公開許諾する」事態が何件か発生してしまい、本当の権利者からのクレームで私が平謝りしたこともありましたが、その後出版社から電子化が決まり、公式で手に入るようになった作品も存在します。作家さんには申し訳なかったですが、結果的に読者が正規に作品を読むことができるようになり、その点は嬉しかったですね。
また、作者さんのご厚意で、マンガ図書館Zでの公開が続行されることになった作品も100点以上ありました。(^^)



・・・ところで、この作品はどうでしょう。


『王ドロボウJING』
鬼才・熊倉裕一先生がコミックボンボンで描かれた名作です。
2002年にアニメ化され人気を博しました。


また、この作品。
『オレ通AtoZ』
恋緒みなと先生による、パソコン通信niftyとか)時代のラブコメ
恋緒先生は私(赤松)と同い年で、私同様パソコンに詳しく、美少女と美麗なカラーが売りです。


いずれも「投稿無料作品」コーナーにアップロードされています。
弊社の「絶版判定アルゴリズム」では、これらは「絶版である」という判定が出ました。確かに、どこからも電子化されていません。今ネットにあるのは海賊版だけです。
また、アップロードしたのは「規約に従った作者本人」と見られます。IPとメールアドレスも保存してあります。
しかし、メールで尋ねても返事が来ないため、広告収益はずっとプールされたままです。


そこで私は、元々の版元である大手出版社へ向かいました。
そして重役4人と面会し、「作者が現れたら、すぐ連絡してほしい」と頼んだのです。
それはすぐに了承されました。この計画の意義(と隠された利点)が認められたのだと思います。


・・・というのも、もし熊倉先生からお返事が来さえすれば、『王ドロボウJING』はもうマンガ図書館Zをすっ飛ばして、むしろ出版社から電子化した方が良いでしょう。この有名タイトルなら、もしかしたら紙での再出版も可能かもしれませんからね。最近はコンビニ漫画という方法もありますし。
今はマンガ図書館Z(と海賊版)でしか読めませんが、もしそうなったら本当に素晴らしいことだと思います。


さあ、今こそ私は世に問いたい。
この『王ドロボウJING』の掲載は是か非か!?

  • 広告収益は現状100%プールされています。*1
  • 「権利者だけがアップロードできる」という規約にチェックしてもらっています。
  • 元々の版元である大手出版社に行き、作者が現れたら連絡してもらう約束を取り付けました。(他にも何社か出版社を回りまして、いずれも約束を取り付けています)
  • 『王ドロボウJING』は、マンガ図書館Zから削除されれば、再び海賊版サイトでしか読めない作品に戻ります。*2


今回のアップロード者は、作者本人ではないのでしょうか。本人のアップロードを無断で削除するには、それなりの理由が必要です。「本人ではないという証明」が欲しいところです。その証明は、誰がしてくれるのでしょう。


・・・ぜひ、皆さんのご意見を伺いたいと思います。


「どんなに Win-Win であっても、完全にホワイトと決定していないのであれば、掲載するべきではない」というご意見が多ければ、私はこれを削除したいと思います。
そして、これを最後にこういったマンガ共有システムからは手を引きます。



【続報】
何と熊倉先生と恋緒先生に連絡が付き、本人確認もできたため、出版社から公式に電子化されることになりました。そこで予告通り、マンガ図書館Zからは削除させていただきます。めでたしめでたし。(^^)

*1:口座登録等の手続きがない場合は、規約に基づいて一定期間の留保となります。

*2:まあブックオフやオークションでも紙版が手に入りますが、それらは作者には1円も手に入りません。

赤松健、これが究極の一手。・・・なぜ我々は「電子書籍版YouTube」を目指すか

前振り:【動画投稿サイトは、著作権侵害のコンテンツを掲載していても、なぜ罪に問われないの?】
YouTubeやニコ動も「違法なアップロードの排除」には取り組んでいるのだと思うのですが、残念ながら私の作品のアニメ版やCDが、今もYouTubeにも大量にニコ動にもバンバン掲載されまくっているのが現実です。
・・・動画投稿サイトは、著作権侵害のコンテンツを掲載していても、なぜ罪に問われないのでしょうか?
それは、プロバイダ責任制限法があるからです。
この法律では、権利侵害の被害が発生した場合であっても、その事実を知らなければ、プロバイダは被害者に対して賠償責任を負わなくてもよいとしています。
YouTubeの規約にも、投稿する際はちゃんと「第三者著作権により保護された マテリアルや、その他の第三者が財産的権利を有するマテリアルが含まれないことに同意」すると書いてありますね。現実は「そんなわけあるか」という感じもしますが、世界中で便利に利用され、今や正に「社会の公器」へと成長しています。


さて、いよいよ最終章です!


(1)新しくなった「マンガ図書館Z」の5つの秘密 〜悪魔を滅ぼす禁断の力〜
(2)求む傭兵! 海賊と闘う「ホワイト・リスト&インセンティブ作戦」とは?
(3)いよいよ発動、「日本の全マンガ蒐集計画」!


海賊版に対抗しながら、日本の全マンガを集めつつ、しかも作者に収益が発生する*1という、上手く行けば最強のシステムになりうる「日本の全マンガ蒐集計画」
その核となるのが、マンガ図書館Zの新型「作品データアップロード機能」でしたね。
(マンガ図書館Zはコチラ。 )
アップロードされてきたマンガZIPが「表紙1枚」だけ公開されますので、それに対して権利者が「公開OK」ボタンを押すと、全ページ公開される仕組みになっています。

ただしこの仕組み、大幅に改善しなくてはならないポイントが出てきました。
YouTubeやニコ動と変わらないくらい、とても簡単に権利者が公開許諾ができるがゆえに生じている、要改善なポイントです。
その要改善ポイントとは、”権利者が「公開OK」ボタンを押す”の部分。

この権利者チェックの部分を、早急に何とかしなくてはいけません。
現実に、市川和彦先生・つるぎ基明(サケマス)先生・新井リュウジ先生など、作者ご本人が公開ボタンを押して頂いており、想定通りのアクションになってはいるのです。しかし、想定外に、第三者が公開許諾してしまう事案があったのです。



さて。その前に、そもそも何故このような「権利者から公開許諾が出て、そのまま公開が開始される」ようなシステムを開発したかをご説明いたしましょう。これは、今日まで(恐らく全マンガ家の中で最も)ネット海賊版に対抗してきた私の、「究極の一手」とも言えるシステムであります。


まずコチラをご覧下さい。これは私(赤松健)の作品の、ネット海賊版リンク集です。
あらかた全作品を読むことが出来るようになっており、しかも赤松には収益が一切入りません。
そこで私は、これら海賊版データを回収し、第三者にアップロードしてもらうことによって、作者の収益に繋げる実験を続けてまいりました。


そしていよいよ今回、YouTubeニコニコ動画と同じく、

  • 「権利者」が、規約に同意した上で全ページ公開できるシステム

を取り入れました。
これは、YouTubeニコニコ動画がすでに社会の公器になっていることを鑑み、

  • 彼らに先んじて、広告収益を100%作者に還元する「電子書籍YouTube」システムを作り、海賊版や動画投稿サイトに対抗していこう

という意思の表れなのです。そのためには、やはり同じく「権利者が全ページ公開できる」システムにする必要があります。でなくてはスピード的に太刀打ちできません。音楽や映画やスマホ用アプリは、もう海外にプラットフォームを取られてしまいましたが、漫画ならまだ間に合います。
ちなみに、

  • 全ページ公開しただけでは広告収益は入りません。弊社と契約し、銀行口座を登録した作家様だけに、広告収益などをお振り込みしています。本人確認できるまでは、広告収益はプールされる仕組みです。

また、連続して公開ボタンを押すような人には警告メールが行きますし、そして実はツイッター上に作者ご本人がおられる場合」には私が直接ご本人にDMで確認してニセモノを排除しています。


それでも、この権利者チェックに改善の余地がある点に関して、「ミイラ取りがミイラになっては本末転倒だろう」というご指摘はあるだろうと思いました。
しかし驚いたことに、スタート時だけでかなりの数の作家さんが公開OKを出して下さり、非常に理解を示して下さっていることが分かりました。

★許諾したマンガ家さん達の声

  • サイトの企画趣旨は、大変よく理解できた。とても面白い試みだと思う。埋もれていた過去の作品に日の目を見せてやれるのは、純粋に嬉しい。さらにそこに収益の道筋まで用意されているのであれば、商業漫画家を目指す若い作家さんや、諸事情でコミックス化が困難な作家さん達の指標にもなれる気がする。
  • 自分としては、ネット時代のこうしたグレーゾーンの問題はある程度許容すべきという考えであり、今後なんらかの契約の上で公開して差支えない。
  • もともとマンガ図書館Zに大変興味があり、私の漫画でも公開できる物は無いか…と考えていた。
  • 私の作品でも気にして、読みたいと思ってくださる方がいるということは本当に有り難い。それがなんらかの収益につながるのであれば、更に有難い。
  • 近年の違法なアップロードを止めることは無理であること、できればいろんな人に読んでもらいたいとは思うこと、もっとできるならば対価が入るならばなおよいこと。これを常々思っているので参加したい。
  • 今まで自作品で海賊版や権利関係のトラブルに巻き込まれた事が無かった為、あまり深く考えた事は無かった。しかし漫画図書館Zに参加する事で、その意義に賛同し出来る限りの協力をしていこうと思う。
  • 今回のマンガ図書館Zの発想は、一漫画家としても納得できるものである。一昔前ならともかく、ネットの普及している今なら単行本が絶版になってなお、作者に収益が還元されるというのは現状のネット違法アップロードに対して為す術の無い漫画家にとって見事なカウンターとなるもので、自分としても感心する事しきり。
  • 私は現在のところ引退状態だが、やはり自分の作品が忘れられていくのが寂しく、少しでも新しい読者の目に触れてもらえればと、マンガ図書館Zにお世話になることにした。


掲載拒否する場合も、それなりに理解を示して下さる場合が多いです。

★掲載を拒否したマンガ家さん達の声

  • 広告収入を得る形が個人的に嫌い。批判も揶揄もしないので、私は誘わないで欲しい。
  • あの作品は、来年あたり出版社から再発売の予定。
  • 該当作品は、ある出版社から電子書籍化されるので不参加。しかしいつかは収入が途切れてしまうと思われるので、その時こそ無料公開に踏み切りたい。改めて相談にのって欲しい。

これは私にとって驚きでした。なかなかに好意的な内容が多く、もし連絡が取れた場合は「打率9割」以上で許諾OKが取れています。
ただもちろん、お怒りになっている先生も2名おられます。
本音では、私はとても恐ろしいです。
しかしながら、この手法を進められるとしたら、恐らく(TPP対策や児ポ法対策、著作隣接権問題や海賊版対策、自民党議員への表現規制反対ロビイングなどの活動を、漫画家の中では殆ど一人きりでやり続けてきた)私、赤松だけではないでしょうか。複数の識者からの勧めもあり、思い切ってやってみることにいたしました。


もしグーグル(またはアマゾンやネイバー)が電子書籍の世界でも「日本漫画を管理する立場」になった場合、海外の価値観で日本の文化を選別し、検閲してくることでしょう。そして広告収益を100%作者へということも無いでしょう。その点、私なら検閲はしませんし、手数料も取りません。


もしこの手法が強いバッシングを受けたら、私はもう電子書籍サイト運営から引退して、本業の漫画連載にでも集中しようかな・・・と思っています。
なぜなら、海賊版サイトにあるのは無視するが、マンガ図書館Zにあって作者の収益化に役立てる仕組みを作るのは許さない(=叩く)」という漫画業界からの意思表示だと、私は受け止めるからです。
いかがでしょうか。



最近、アマゾンがAmazonプライム「ビデオ見放題」に続いて「音楽聴き放題」も始めました。次は、どう見てもAmazonプライムでの「マンガ読み放題」を狙っているはずです。もともと本業は書籍ですしね。


グーグルが、裁判で勝ちました。大量の書物を無断で電子化したことが著作権侵害に当たるとして、米作家協会などが訴えていたあの裁判です。あのグーグルブックスが復活でしょうか。日本に攻めてきたら国会図書館でも太刀打ちできません。


その国会図書館も、近年は様々な実験を行っています。スキャンしたデータを利活用したがっているのは明白で、やるなら著作者に収益があるような仕組みでやって欲しいものですね。
そして政府与党のフェアユースの方向性
最後に、ネット海賊版


・・・ここまで来ると、我々「日本人」が、しかも「クリエイター主導」でこれを率先して進めないと、またもや外資に扉を開けられて、我々日本人はそれを「使わせていただく」ことになってしまいそうです。検索エンジン*2クラウドコンピューティング*3などと同じく。
または、国が(クリエイターの利益優先ではなく)利用者の利便性主導で始めてしまうでしょう。


私に、しばらく実験させてもらえないでしょうか!?
そして、もし今回の方法を超える海賊版対策法&書籍データの活用方があるなら、教えて欲しいのです!

*1:絶版書の場合、そのままでは収益は0円ですからね。

*2:日本人は、例えば検索した後の冒頭引用文の著作権を気にして、検索エンジン事業に二の足を踏んでしまう。

*3:日本人は、クラウドに音楽を保存すると著作権侵害では・・・と気にしてしまう。そしてシステム作りからも撤退してしまう。

いよいよ発動、「日本の全マンガ蒐集計画」!・・・9月の広告収益ベスト10作家も発表!

先月、作者の許諾を得て行った「ホワイト・リスト&インセンティブ作戦」

  • 海賊版のマンガZIPをネットの皆さんにアップロードしてもらい、それに広告を付けて無料公開した上で、広告収益は作者に100%お渡しする

という画期的な実験でした。
この方法なら、海賊版マンガにダメージを与えつつ、楽に作品データを収集して作者の収益へと繋げることができます。


実験はまたもや大成功を収め、更に色々な特徴(というかコツ)が分かってきました。

  1. アップロード者はこういった実験に協力的であり、その人数は予想よりずっと多かった。
  2. また、アップロード者が必ずしもインセンティブを欲しているとは限らない。
  3. サイバーロッカーにあるのは新刊が主で、マイナー誌の絶版書はあまり収録されていない。また、常に削除されては再登録されている。
  4. 海賊版ZIPの1枚目は表紙カバーの横長スキャンであることも多く、電子書籍としては表紙のみトリミングが必要。
  5. 自分で裁断スキャン(自炊)している人は非常に少ない。
  6. 読者は、多少の画質の悪さは意外と気にしない。


今回の結論として、

  • 三者海賊版マンガZIPをアップロードし、それを作者の利益に結びつけるこの手法は、思ったより楽で有効である

と申し上げてよろしいかと思います。



【マンガ図書館Zの広告収益って何円くらい?】
ところで、先ほどから出ている「広告収益」って、どれくらい儲かるのかご存じでしょうか?
マンガ図書館Zでは、ご存じの通り「広告収益を100%作家さんにお渡ししている」のですが、最近その金額がなかなか高額になってきました。何と前会社時代の3倍以上です。
マンガ図書館Zでは、9月の広告収益の振り込みがちょうど11月から始まっています。そのトップ10を発表しちゃいましょう!(※ちゃんと各先生方に、名前と金額を公表する許可を得ています)

漫画家の皆さん、これは「1年の収益」ではないですよ。「1ヶ月の収益」です。
左が「広告収益にPDF販売やKDP販売など全て合計」した金額(総合)で、右が「広告収益のみ」の金額です。
9月の第1位に輝いた堤抄子先生は、広告収益だけで一ヶ月6万円、KDP等を合わせると一ヶ月10万円に達しております。・・・余談ですが、堤先生は11月の「エルナサーガPDF販売促進キャンペーン」でも30万円以上稼いでおられます。
もちろん、掲載している作品数が多ければ作家ごとの収益は増えますので、一概に「順位が高いから人気」とも言えません。大人気でも一作品だけではベスト10に入れませんからね。
トップ10作家の全広告収益に対する比率は、円グラフにするとこんな感じです。

ちなみに、アマチュア作家(&プロ作家)の「アップロード投稿作品」にも、やはり広告収益を100%お渡ししています。投稿での収益1位は、神吉李花さんでした!


絶版するほど古めの作品群だと考えると、ぶっちゃけマンガ図書館Zの広告収益は「出版社からの1年分の収益報告に(一ヶ月だけで)匹敵する」と思われるのですが、いかがでしょうか?(出版社から来る電子版印税は、下手すると半年で1万円以下じゃないですか?)
どうやら、プロ商業作家にとって最も効率の良い作品発表方法は、

  • まず「雑誌の原稿料」を貰って、更に「単行本の印税」でも稼ぎ終わったら、数年後にはマンガ図書館Zなどで無料公開して「読み返された分を何度も広告収益で稼ぐ」

という方法でしょう。最後に無料公開すると読者層が桁違いに広がり、現行の新作への導線になります。この回転を目指すわけです。



【マンガ図書館Zの新型「作品データアップロード」機能】
さて、私はこの、

  • 原稿料と印税で稼ぎ終わり絶版となった作品は、最後に広告有益型の無料公開システムで広く読んでもらい、永続的に稼ぐのが良い

という理論と、さきほどの

  • 三者によるマンガZIPのアップロードを作者が許諾するシステムは、楽で有効である

という結論を組み合わせて、

  • 三者がマンガZIPをアップロードし、それを作者が許諾して広告収益100%を得ると共に、海賊版マンガにダメージを与え、更に読者は無料で全巻読める

というシステムを構築しました。この手法を、全てのベテラン漫画家に提案するものであります。


そのシステムこそ、マンガ図書館Zの新型「作品データアップロード」機能。
これは、今までの「マンガ図書館Zのアップローダー」に、昔の「絶版マンガ図書館時代のアップロード機能」をプラスしたものと言えます。
アップロードされてきたマンガZIPが「表紙1枚」だけ公開されますので、それに対して権利者が「公開OK」ボタンを押すと、全ページ公開される仕組みになっています。




今まで古書店海賊版でしか読めなかったような作品が、安全な形で無料で読むことができ、しかも権利者の方には広告収益の100%が還元される夢のシステム。
作家の皆様、ぜひアップロードされてきた漫画データに対する「公開許諾」をお願いいたします!
また、このシステムでは今まで通り(権利者自身による)自作アップロードもできますので、商業作品以外の発表の場所としてもお役立て下さい。


・・・目指すは、出版社(=新作を持つ)と共同での、日本の全マンガ作品のコンプリート蒐集
ここに来れば、どんなマンガでも必ず読める(または新作を買える)。私たちの仕組みを使えば、この果てしない夢が叶うと考えております。

「アップロードされた作品データに公開許諾をしたい」、「スキャンした絶版作がある」、「絶版作の生原稿を持っている」、「新作を描いたのでみんなに読んでもらいたい」 など、ご質問やご希望がありましたら、ぜひ「jct-creator@j-comi.co.jp]」からご連絡ください。
よろしくお願いいたします。


【参考】
上の図に出てきた「51カ国語の自動翻訳」のデモンストレーション動画です。
人工知能が漫画内のフキダシを自動検知し、OCR光学文字認識)して自動翻訳します。

求む傭兵! 海賊と闘う「ホワイト・リスト&インセンティブ作戦」とは?

【前回までのあらすじ】
こちらをご覧下さい。これは、Googleで「ラブひな zip」を検索した結果です。
出てきたのは、全て「海賊版のマンガ」でして、これらを収録しているのは、どれも「サイバーロッカー」という海外の違法サーバですね。最近の海賊版マンガ流通は、winnyなどは使われず、こういった「サイバーロッカー」が主に使用されています。
こうしたサイバーロッカーや海賊版ブログですが、過去に何度も出版社が撃滅作戦を展開してきました。しかし、海賊版を撃滅できたことは過去に一度もありません。古い「絶版本」に至っては、そもそも出版社に「絶版本の海賊版」をどうこうする権利がありませんので、完全に野放し状態です。
・・・そう、絶版マンガは世界の誰も守っていないのです!!(※重要)
そこで、私は前回、「サイバーロッカーを逆に利用し、作者の収益に役立てる作戦」を考案しました。
それは、

  • サイバーロッカーから自分の作品をダウンロードしてきて、それをそのままマンガ図書館Zにアップロードし、広告を付けて無料公開してしまう

という「乗っ取り」型の新手法です。
・・・試しに私が、拙作「A・Iが止まらない!」を私自身がネット海賊版サイトからダウンロードして、マンガ図書館Zの新型アップローダーを使ってアップロードし、そして全ページ公開した様子をご覧下さい。完全合法です。
http://twilog.org/KenAkamatsu/date-150925/asc
この実験は大成功を収め、画期的な手法だと話題を呼んでおります。広告収益も100%、私に振り込まれています(笑)。マンガ図書館Zの新型アップローダーとは?



【今回のホワイトリスト作戦について】


さて。こうなると今度は、赤松健の作品だけではなく、他の先生の作品でも同じ実験をやってみたくなってきます。
そこで先週、15人の漫画家さんに直接お願いしまして、実験の趣旨について理解して頂くと共に、以下の3点について正式に承諾して頂くことができました。(各先生方、感謝ですm(_ _)m)


★ 15人の漫画家さんからの、3つの許諾

  1. 赤松が指定した一週間だけ、第三者(主にマンガ図書館Zの趣旨に賛同するファン達)が、このリスト内の作品を「サイバーロッカー」からダウンロードしてきても良い。*1
  2. その作品データ、もしくは手持ちの自炊データを、マンガ図書館Zにだけアップロードすることを許可する。*2
  3. 今回、アップロードしてくれた人へのインセンティブ(報奨)を出す実験を行っても良い。


さあ、これで私の考える最強のホワイトリストが完成しました。こんな実験は世界初でしょう!

■上記3つを許諾して頂いた「ホワイトリスト
(色が薄くなっているのは昨日アップロードされた作品。より画質の良いものならアップロード歓迎)

  • 瀬上あきら先生・・KAGETORA(全11巻)』『神喰らい』
  • 石山東吉先生・・『チキンクラブ(全11巻)』『覇王の森(全6巻)』『MAPマッピィ(全6巻)』『ランブルアイズ』『ジャンジャンバリバリ(全7巻)』『カマキリン
  • ちば・ぢろう先生・・『オタが行く!』『来福OL幸呼さん』『G.Bガールズブロウ(全2巻)』『魔羅ノ介』
  • すきよししんじ先生・・『ナマイキ少女』
  • 上連雀三平先生・・『アナルエンジェル』『やまとなでシコ』
  • U−K先生・・『堕天使の鎖』『恋愛献身Sex Love』
  • 魔訶不思議先生・・『アンチテーゼ』
  • 森野うさぎ影夢優先生・・『露―桜香の織』『密室の塾』『娘人形飼育・上巻(処行為)』『娘人形飼育・下巻(爛臭気)』
  • 悠理愛先生・・『アクマのタマゴ!』『ぱらだいすラバーズ』『ラブドールQ』『妄想天使ヴィジョン』『さ〜ふぃん☆ばに〜』『モエル』『1000COMPLEX』『淫妖伝アビラストラ』『特殊乳対性理論』
  • 吉野志穂先生・・『調教淫熟日記』『真夜中の愛奴たち』『蕾の誘惑』『変態倒錯』『背徳のメヌエット』『あぶないおキャンTEEN』『放課後Hタイム』『女淫の祝祭』『恥辱のプレリュード』『ABCぱにっく』『ふるえて眠れ!!』『禁断のノクターン

  • スパークうたまろ先生・・『インモラル逆襲』
  • ほしのふうた先生・・『天然・幼液』『晴れときどきぬれねずみ』
  • みにおん先生・・『ヘアトリガーあーる』『HairTrigger』『ドキドキ恥辱画廊』『稚魅穴る』『少女寵愛調教』『少女強制絶頂・姦児ちゃう』『ドキドキ淫行厨房』『ドキドキ少女病棟』『Sosoul乳』『カウパーQ』『幼姫萌絶天国』
  • のぎまこと牧野靖弘先生・・『お願い 満珠を守って!』『茜ちゃんPANIC』
  • 山本夜羽音先生・・『PUSSY TALKIN'』『新世紀無頼伝・俠子エクスプロージョン』『7DAYS 13HOURS』『ウタリア戦記・閃光のアーシュラ』『Winter Guarana』『渋谷少女リアル』『聖隷』『ナイトフラッパー』『ラブ・スペクタクル』『ナードボイルドR』

・・・実はこの「サイバーロッカーからDLしてきて加工流用する」という手法は、スキャン用のコミックス原本が発見できなかった場合に、いつも弊社が使っていた手法でもあります。作者の許諾の元、いつもやっていたことなのです。


しかし注意点が2つ。

  • このホワイトリストに載っている作品について、私が指定した一週間(2015年11月28日〜12月4日)以外では、サイバーロッカーからダウンロードするのはやめましょう。
  • ダウンロードしたデータをマンガ図書館Zにアップロードした後は、そのデータを自分のHDDから削除しましょう。

この2点だけは、皆さん守って頂きたいと思います。作品データをずっと自由にして良いわけではないのです。
※この実験の有効期限:2015年11月28日〜12月4日まで。既に終了しています。


【加えて、インセンティブ作戦について】
ところで絶版マンガ図書館時代から、アップロード機能について指摘される問題点として、「アップロードする人に、何のトクも無い」ことが上げられていました。*3
これに対して違法なサイバーロッカーでは、「自分がアップロードした電子書籍(←他人の作品だろ!)が世界の誰かからダウンロードされると、そのDL数に合わせてインセンティブ*4が貰える」という機能があります。そのため、サイバーロッカーにアップロードする人は、特に絵の才能など無くても、他のトレントwinnyや別サイバーロッカーから他人の電子書籍を移動してくるだけで、今度は自分が金を得ることが出来るわけですね。こうして、誰か一人がネットに自炊データを上げただけで、すぐに全世界のサイバーロッカーへ爆発的に海賊版データが広がっていくのです。*5


このインセンティブ制度についても、以前から一度実験してみたく思っておりまして、今回は「アップロードした人」にインセンティブを設定することにしました。割と考えられるのは「広告収益の10%を1年間」などですが、それだと計算が面倒なので、今回は現金一括払いにさせて下さい。
この度、会社から正式にこの実験用の予算が出てまして、何とアップロード1巻につき3000円です。・・・・うわ、結構高いな!(^^;) 私もどっかから落としてアップロードしようかな。


やり方は、以下の通りです。

  • まずはマンガ図書館Zへ無料会員登録して下さい。そうしないとアップロード機能が使えません。
  • 上記のホワイトリストの中で、自炊または何らかの方法で所持している作品データがありましたら、それをマンガ図書館Zにアップロードし、公開設定して下さい。
  • アップロードの際は、「一般作品」か「R18作品」かをご自分で判断し、ボタンで設定して下さい。またR18作品の閲覧はプレミアム会員しかできません。(理由)
  • データが採用されたアップロード者には、インセンティブをお渡しします。同じ作品が複数アップロードされた場合は、画質の良い方を採用します。同一ファイルなら先に公開した方がインセンティブの権利を得ます。ファイルの選定はマンガ図書館Zの裁量で行います。
  • アップロード者は「マイページ」で口座を登録することで、1巻につき3000円を貰うことが出来ます。登録しなければ、お金はプールされます。
  • 1タイトル3000円ではありません。1巻につき3000円なので、例えば瀬上あきら先生の 『KAGETORA』は全11巻ですから3万3千円になります。しかし上連雀三平先生の『アナルエンジェル』は全1巻なので3千円となります。
  • 石山東吉先生の作品など、サイバーロッカーでは存在が確認できていないものもホワイトリストには載っています。これらは「自炊」推奨です。自分で裁断スキャンしてデータを作って下さい。アップロード締め切りは12月4日となります。
  • サイバーロッカーからのダウンロードは、初心者は手を出してはいけません。ウイルスが混入している可能性もあります。またダウンロードで何らかの損害を被っても、マンガ図書館Zは一切責任を負いませんので、十分注意してご参加下さい。


このインセンティブ実験の意義は、お金とかそういうのではなく、実際にやってみて「どんな問題が起こるのか、どんなルールが必要なのか」をつかむ事にあります。この辺り、分かって頂けるでしょうか。
最近のTPPの議論では、何とか非親告罪化の対象を海賊版に限定することが出来そうですが、実は海賊版にしか存在しない書籍データ(孤児作品も含む)もあって、悩ましいところです。玄人の皆さん、サイバーロッカーに収録されている「絶版マンガ」だけでも抜き出して利活用し、作者の役に立ててみませんか?
この意義に賛同される方。ぜひご協力下さい。よろしくお願いいたします。m(_ _)m


※この実験の有効期限:2015年11月28日〜12月4日まで。既に終了しています。


PS.
今回アップロードして下さった方々へ。まずは我々が「採用データ」を一つ選びます。これは予告通り、我々が画質などを見て行います。決定まで数日間下さい。
決定後、その採用データをアップロードした方々に報酬金をお渡しします。採用されなかった方々にはお金は入りません。
報奨金は、マイページから得ることが出来ます。採用者にはメールで連絡する予定です。


*1:決して複製権侵害には問われません。

*2:これも決して複製権侵害には問われません。

*3:私としては、「埋もれた作品を掘り起こして、しかも作者に広告収益が行ったら読者としても嬉しいのでは」とか思ったのですが、そうでもないのかも。

*4:普通はお金です。

*5:実際にはもう少し複雑なシステムなのですが、詳しくは割愛します。

【補足1】なぜ、成人向け作品が有料プレミアム会員のみのサービスになったか

今回、成人向け作品(R18)は「有料プレミアム会員のみのサービス」となりました。
R18は有料プレミアム会員専用ですので、広告は当然消えます。そして広告収益の代わりとして、作者にはプレミアム会員費から閲覧ポイントに応じて収益が支払われます。


有料になった理由としては、以下の2点が上げられます。


(1)エロ漫画向けのエロ広告は、圧倒的に数が足りない。広告料も足りない。
弊社がグーグルや大手メディアレップから貰ってくる「広告」には色々ありますが、どれも成人向け作品の隣に置くのは規約違反であり、やはり成人向け作品には専用の「成人向け広告」を載せる必要があるわけです。しかしグーグルなどの大手は性的な広告は扱っていないため、扱うことのできる数少ない代理店から貰ってくることになります。ところが、その数は圧倒的に数が足りず、広告料も全然低いです。
・・・正直申しますと、絶版マンガ図書館」時代には、私(赤松)が自費でR18用の金額を補填しておりました。基準は「一般作品と同じ閲覧数を稼げば、R18でも大体同じ広告収益額になる」イメージです。
これは、(誰にも迷惑はかけていませんが)不健全な状態ですよね。そこで、一般企業と合体するこの機会に、プレミアム会員費からちゃんと計算してお支払いすることにしたのです。
・・・ただ、広告の問題よりも大きいのは、次の件です。


(2)なるべく多くの成人向け作品を、無事に収録できるようにするため。
おや? なぜ有料にすると、多くの作品を無事に収録できるようになるのでしょうか?
例えば、新生「マンガ図書館Z」では「自動翻訳したエロ漫画」が世界51カ国語で海外から読めるようになっています。
ところが、弊社では、多様なR18作品を多数収録しており、これをいきなり世界展開として実現すると、インパクトが大きすぎて、

  • 国レベルでブロックされる可能性がある。(特にロシアや中国など)
  • 宗教によっては文化衝突に発展する。(日本漫画=害悪と誤解されてしまう)

という危険性があるようです。*1
しかし私としては、サイト側による「作品検閲」は控えたいので、

  • R18のみ有料化して、まずは一旦「国籍・性別・年齢にかかわらず誰でも好き勝手に読めるという状態」を避ける

ことにいたしました。
これならクレジットカードで強固かつ正確な年齢確認になりますし、わざわざ実費を出すわけですから「金を払って読もう」という意志を持った大人が自分の都合で読む、という状況を実現できます。(=買いたくない人、見たくない人の目に付くことが無い。)
もちろん一般的な年齢確認(YES/NO)もありますし、ログインも必須となっています。


ただ弊社にも色々基準はありまして、サイトのスタート時には何作か「一旦不掲載」にした作品が存在します。具体例を挙げますと、たまちゆき先生の「つるぺた天使」などはマンガ図書館Zのスタート時には不掲載でした。
しかし(たまちゆき先生の同意の下で)表紙のランドセルをCGで削除するなどして、現在は普通に掲載しております。こういった交渉や報告は、私(赤松)が作家目線で行っていますのでご安心下さい。

*1:この危険性については、大手出版社から忠告されて初めて気付きました。感謝です。

新しくなった「マンガ図書館Z」の5つの秘密 〜悪魔を滅ぼす禁断の力〜

こんにちは、(株)Jコミックテラス取締役でマンガ家の赤松健です。
私が2011年から運営してきた絶版マンガ図書館Jコミ)」ですが・・・・おかげさまで近年、マンガ家さんからの掲載依頼が殺到し、マガジンで連載しながらの運営ではさすがに厳しい状況になってまいりました。(^^;)
そこで先月から、大手企業の資本を入れて新会社を作り、スタッフを増やして、「掲載スピード」「作家サービス」の大幅向上を図っております!


新会社の名前は「(株)Jコミックテラス」と言います。略して「Jコミ」です。(笑)


そして、8月3日からスタートした新サイト名は「マンガ図書館Z」です!*1


・・・いわゆる「会社売却」ではないので、赤松は別に儲かっておりません。(笑)
もちろん赤松が続けて前面に立って運営を指導し、作家さんとの対応も担当いたします。つまり、

  • 「掲載スピードが上がって、作家さんが儲かるサービスが大幅に増える」こと以外は、今まで通り

ということです。


主なサービスの特徴としては、

【1】広告収益は、今まで通り作家の取り分100%
【2】オフィシャル全作品で、「電子透かし入りPDF」も同時に販売
【3】いよいよ51カ国語の自動翻訳が(オフィシャル全作品で)スタート
【4】コミックスになっていない部分を、オンデマンド印刷して販売
【5】電子書籍YouTubeとしての機能を持つ、新型アップロードシステム

となっています。
どれも様々な理由から、他社では非常にマネしにくいものです。
特に【5】が重要なのですが、まずは1〜5を順番に詳しく説明していきましょう。



【1】広告収益は、今まで通り作家の取り分100%
マンガ図書館Zでも、やはり基本は「広告収益型の無料閲覧」システムです。
読者は無料でマンガを全巻読むことができ、広告収益は今まで通り作家の取り分が100%となっています。
例えば電子の売上げが年1万円を切っている作品は、ぶっちゃけ有料販売するよりウチで無料公開(広告収益型)した方が儲かるのですが、それよりも何よりも、無料公開すると感想がいっぱい来るのです。作家的にはそれが嬉しい。(^^)

新型ビュワーは、マウスのホイール回転でパラパラと素早くページをめくることが出来ます。矢印キーやスペースキー、マウスクリックでもめくることができます。広告1と2はマンガの左右にありまして、広告3はYouTubeのように「×」を押せば消えます
ただ、成人向け作品は今回、有料プレミアム会員のみのサービスとなっています*2。昔のJコミ時代と同じレベルに戻ったわけですが、これについては別項で説明いたします。

【2】オフィシャル全作品で、「電子透かし入りPDF」も同時に販売
JコミFANディングで好評だった「電子透かし入りPDF」を、Zオフィシャル全作品*3で利用できるようになりました。
ところで他の一般的な電子書籍ストアの場合、買うのは「読む権利」だけであり、倒産やサービス終了すると、買ったのに読めなくなってしまう場合がありますよね。せっかく買ったのに消滅するとは、由々しき事態です。これなら紙の方がマシ。
その点、「マンガ図書館Z」のマンガPDFは、DRM*4無しですので、どんな端末にも自由にコピーして読むことが出来ます。しかも、例えJコミが倒産しても、全く問題無く一生所有し続けることができますので、他の全ての電子書籍サイトに比べて「所有感」が段違いです。
さらに、購入者を特定することができる情報が刻印されていますので、WinnyなどP2Pに流すことは憚(はばか)られます。*5
・・・まさに「究極の電子書籍の形」と申せましょう。

  • このPDFの価格は、何と300円。(他の一般的な電子書籍ストアよりもかなり安い)
  • そして作者印税は、何と40%です!!(他の一般的な電子書籍ストアの2〜3倍!)

好きなベテラン作家さんにお布施するイメージで購入するのも良いでしょう。「電子透かしってどんな感じなのかな?」と気になる人は、プレミアム会員になると月に1冊だけ好きな本を無料で入手できますよ。



【3】いよいよ51カ国語の自動翻訳が(オフィシャル全作品で)スタート
マンガのフキダシを、コンピュータがOCR光学文字認識)して、全作品を世界51カ国語に翻訳できます。
これは恐らく世界初の試みです! これで我々日本のマンガを、世界のどこでも誰にでも読んでもらうことができるわけですね。我々作家にとって、こういうのは一つの大きな夢でした!(^^)

どうです。上部の水色のツールバーにある「翻訳」ボタンを押した後は、ページをめくるごとに、パラパラッと外国語に翻訳されていくのが面白いでしょう?! コンピュータ翻訳なので訳文はイマイチなのですが、少しくらい訳が違っていても、マンガですから「キャラクターの表情」で補完することができるのです。みなさんも、お好きな漫画でちょっと試してみて下さい。
将来的には、セリフと関連した商品を買ってもらい、作者に還元するなどが可能です。また、漫画の「セリフ検索」も可能になりますし、「日本漫画で使われている言葉の傾向」など学術的な用途にも使えそうですね。*6


【4】コミックスになっていない部分を、オンデマンド印刷して販売
最近マンガ業界で増えている、ある現象をご存じでしょうか。
それは、「単行本の1巻目は出たけど、2巻目が(描いたのに)出ない」または「そもそも1巻さえ出ない」という現象です。
最も多いのは、WEB連載が単行本化される場合かと思います。*7
この現象から作品を救済すべく、弊社では以前から「未単行本化作品の、プリントオンデマンド販売」を実施してきました。これは、

  • 当サイトに掲載された作品を、ボタン一つで「紙の書籍」として印刷し、読者の手元にお届けする

という、画期的なサービスです。
今回これがパワーアップし、Amazonのプリントオンデマンド部門と提携することによって、送料無料で全国の購入者にお届けできるようになりました。しかも何と、Amazonに「普通の紙の本」として並びます。現在は最終調整中で、10月からサービス再開予定です。
今年中には、未単行本化作品のみならず、マンガ図書館Zの「Zオフィシャル全作品」で印刷が可能になる予定です。ちょっと画像が荒めの作品もありますが・・・



【5】電子書籍YouTubeとしての機能を持つ、新型アップロードシステム
いよいよ、海賊版対策の「究極の(禁断の?)一手」が登場です!
これは、誰でも作品のデータがあればそれをアップロードして、すぐに全ページ公開できるという、まさに電子書籍版のYouTubeともいえる機能。
もちろん、広告収益は100%受け取ることができます。無料で読んでもらえばもらうほど、広告収益も増えるというわけですね。

このシステムを使ってアップロードするには、誰でも簡単なユーザー登録だけでOK。そして広告収益を受け取るには、受け取り用の銀行口座を登録するだけです。*8
生原稿スキャンや自炊ファイル、はたまた海賊版ZIPをそのまま持ってくるなど、作品データには色々あります。それら手元の作品データが、作者の収入を生み出す「打ち出の小槌」になる・・・こんな画期的なシステムは、他には無いと言えるでしょう!


そもそもこういった「広告収益100%分配」というのは、普通の企業にはできませんし、続けるのも難しいです。
・・・では、なぜやるのか? それを理解してもらうには、海賊版について理解してもらうことが必要です。


さて、皆さんご存じの通り、ネット上は海賊版のZIPファイルであふれています。試しに私の『ラブひな』を探してみると・・

はい、ラブひなの海賊版ZIPがいっぱい出てきましたね
また、例えばよく知られるこのサイト「はるか夢の址」をご覧下さい。ここからのリンクで、マンガ単行本どころか今週のジャンプやマガジンまでも違法ZIPに辿り着けてしまいます。作家の皆さんも、ご自分の名前で検索してみて下さい
YouTubeやニコ動も「違法なアップロードの排除」には取り組んでいるのだと思うのですが、残念ながら、私の作品(例えば「ラブひな」)のアニメ版やCDが、今もYouTubeにも大量にニコ動にもバンバン掲載されまくっているのが現実です。
そして、これらアップロードされたものを見たり読んだりしてもらっても、作家には1円だって入らないんです。


こういった海賊版ZIPですが、過去に何度も出版社が撃滅作戦を展開してきました。しかし、海賊版と正規版はいつでもイタチごっこの関係にあり、海賊版を撃滅できたことは過去に一度もありません。
「絶版本」に至っては、出版社に「絶版本の海賊版」をどうこうする権利がありませんので、完全に野放し状態です。そう、絶版本は世界の誰も守っていないんです。全然知らなかったでしょう?(^^;)>作家の皆さん


私が思うに、(特に絶版本の)海賊版を撃滅するには、

  • 海賊版と同じく無料であること。
  • ウイルス感染の恐れもある海賊版より、セキュリティ的に安全であること。
  • 海賊版より使いやすく、さらに自動翻訳などの付加価値がついていること。
  • うしろめたい罪悪感と共に読むのではなく、むしろ「(広告収益などの面で)私は作者の役に立っているんだ」など、読んでいて気持ちの良いシステムになっていること。

が重要です。この4点がすなわち「マンガ図書館Z」の根幹にもなっています。
そして、何より「マンガ図書館Zにくれば、どんな作品でも読める」状態を目指すことが肝要。「新型アップロード機能」はそのための仕組みであり、作品をどんどん集める仕組みでもあるのです。


もちろん、既存の出版社や電子書籍ストアの迷惑にならないように、特別な対策もとられています。弊社のアップロード機能では 、hon.jpと正式提携して「出版社が今扱っているような作品」は自動的に削除されるようになっています。これを「絶版判定アルゴリズムと名付けました。だから、例えば『ワンピース』は(例え尾田先生ご本人がアップロードしたとしても(笑))このフィルタに引っかかって削除されます。
他に、明らかにおかしなものは手作業で非公開の対応をいたします。このアップロード機能は、YouTube等と同じく、誰でも「自分の作品」をアップロードしてもらう手段として提供されているからです。

  • 「作者と読者が、共にハッピーになるWin-Win」を目指した、他にはない画期的なシステム。これがマンガ図書館Zの新型アップロード機能です!


・・・いかがですか、この壮大な構想!!(笑)
もう、手持ちのデータをアップロードしないという選択肢はないはずですね。まあ、海賊版の業者さんはご不満かもしれませんけど。(^^;)
なお、作品をアップしたいが「データを持っていない」とか「手に入らない」、「海賊版で流通しているようだが、もっと良い画質のデータで公開したい」ような場合は、我々にお知らせを。専門スタッフが無料でデータを準備したり、既存データをブラッシュアップいたします。同時に、電子透かし入りPDF販売やキンドル販売などで、マネタイズも進めていきます。


このシステムが定着すれば、理論上は出版社が管理している以外の「日本の全ての書籍の本文画像データを全ページ収録」し、その収益を作者側に渡すことが出来る・・・という流れが構築できるでしょう。
そしてやがては、国会図書館が死蔵している「日本のほぼ全出版物の画像データ」を、作家に利益が行く形で利活用すると共に、オーファンワークス*9の問題にもケリを付けるという、作家と読者の夢を実現させることができるのではないかと私は考えています。
その時こそ、

  • あらゆる作家がうるおい、読者の『読みたい!』も満たされ、そしてネット上の海賊版は全滅するという「マンガ図書館Z」の究極目標を達成することができる

のです!!



・・・さて、マンガ図書館Zの5つのサービスをご理解いただけましたでしょうか。(笑)
特に【5】の新型アップロードシステムが肝ですので、その使い方を私が詳しく解説していきたいと思います。まずは、

  • 拙作「A・Iが止まらない!(新装版)」を私がネット海賊版サイトからダウンロードしてきて、マンガ図書館Zの新型アップローダーを使ってアップロード、そして全ページ公開するところから、訓練を始めてみましょう。

9月25日(金)の22時から、ツイッターで実況していきます。(アップロードしたら、うちの絶版判定アルゴリズムに引っかかったりして・・・)
私の計画に賛同する方、ちょっと興味がある作家さんは、ぜひツイッターでの実況をご覧下さいませ。



(追記) 実況、無事に終了しました! その様子はコチラです。



*1:作家さん達から不評だった「絶版」という単語を削りました。(><)

*2:試し読みなら無料で12ページできます。

*3:Zオフィシャル作家というのは、従来までのJコミ時代と同様、弊社と正式契約したプロ商業作家さんのことです。一般投稿作品とは違って、電子透かし入りPDFやKDP、51カ国語の自動翻訳などのサービスを自動的に受けることが出来ます。

*4:デジタル著作権管理

*5:「電子透かし」は著作権法(第113条第3項)によって、不正に除去・改変すると著作権侵害と見なすことができ、損害賠償だけでなく逮捕&刑事罰まであります。これが「暗号化PDF」や「暗号化ZIP」と大きく違うところ。

*6:私(赤松)の持論ですが、文字列検索ができないと、「電子化」する意味は薄いです。 文字列検索ができれば、動画投稿サイトにはない、電子書籍ならではのメリットが生まれます。なぜならテキストは「広告」と精度良く結びつくからです。つまり、セリフ文字列を正確に「広告に結びつける」のが、私(赤松)の個人的な目標であります。読書中に、「そのセリフに関連した商品が買える」、「セリフの言葉から類推し、特定の商品をお薦めする」、「特定の語句の検索結果として、弊社の電子書籍が出るようにする」など。

*7:WEB連載というのは、その殆どが「ネット上で連載マンガを無料で読んでもらい、紙の単行本の売り上げで収益化する」ビジネスモデルとなっています。そうなると、どうしても「WEB上で連載スタート。」→「紙の1巻の売り上げがイマイチだった。」→「残念ながら打ち切りが内定する。」→「採算が取れなそうなので、2巻は出さないことにする。」→「急に連載も終わる。」というパターンが増えてしまうのですね。

*8:アップロードだけを行い、銀行口座を登録しなければ、広告収益を受け取らないこともできます。その場合は、正当な権利者が申し出るまで広告収益がプールされていきます。また、10月中には「メールアドレスと口座名義」だけでOKになる予定ですので、詳細は10月中旬頃にマンガ図書館Zをチェックして下さい。

*9:権利者が見つからず、事実上利用できなくなっている作品のこと。こうなると、もう海賊版の出番というしかない悔しい状態です。孤児著作物とも呼ばれています。